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「あの~…蝶々さん」
話しかけても、蝶は全く返事をしなくなった。
長い沈黙。
訳の分からない世界。
私は、蝶に触れてみようと手をのばした。
ほんのすぐ近くにいる、手のひらサイズほどの蝶。
だが、手をのばしても届かない。
そんな一つ一つが虚しく、そして私を苛立たせる。
「さて、でははじめようか」
一体どれくらい沈黙が続いたのか。
突然蝶が言葉を発した。
それと同時に、蝶が目の前で大きくなる。
一気に大きくなり、真っ白だった世界を埋め尽くす。
あっという間に全てが覆い尽くされた。
だが、真っ暗ではない。
歪んだ映像のようなものがみえる。
ちょうど、カーテンに映し出した映像が、カーテンが風に揺られて歪むような。
360度のパノラマ映像。
プラネタリウムのようだった。
その歪みが、少しずつ収まる。
そして、私はまた、はっと息を飲む。
見たことのある光景。
見たことのあるリビングに、見たことのある人物。
私だ…。
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