漆黒の蝶

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試しに立ち上がってみる。 死ぬと覚悟したとき、確かに私はこのワンピースを着ていた。 濃紺のマキシ丈、柄はない。 ノースリーブのそれに、白の七分袖のカーディガン。 どうせ死ぬなら・・と思ったけれど。 結局着慣れた洋服に袖を通した。 私らしい。 生きることに未練はなかったが、最期くらいは私らしく。 そんな風に思うこと自体、私らしくもない考え方だった。 立ち上がった私は、自分の姿を見る。 ワンピースも、カーディガンも、ミュールも。 確かに私だった。 ただ、やはりここが一体どういう場所なのかわからない。 地獄とはもっと怖い、鬼がいたり、茹で上げられたり。 色でいうところの 黒色 だ。 それに、火山みたいに、溶岩が流れているような。 私の思う地獄の色は 黒と赤 だった。 でも、ここは真逆。 一面真っ白で埋め尽くされている。 さっぱりわからない。
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