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では、天国ということか。
そう、ここは天国なのかもしれない。
私の思う地獄とは真逆の色彩で埋め尽くされたここは。
天国なのか。
私の思う天国の色は ピンク だった。
天使が舞い飛び、とても暖かい。
笑い声が聞こえてきそうな。
そんな印象だった。
そうか、案外天国は殺風景なのかもしれない。
まわりを見渡しても、ただただ白い世界。
でも、地獄のような恐ろしそうな場面もなく。
鬼がいるわけでもない。
まあ、そもそも私の想像の天国も地獄も、テレビや映画、本などの請け売りでしかない。
試しに歩いてみようか。
そう思ったのに、足が前に出ない。
自分で動かせないわけではない。
現にこうして立っている。
確かに、コンクリートのように固い床だった。
だが、下をみても自分の足以外は何もない。
立っているはずなのに、真っ白な空間に浮いているようにも見える。
一度そう見えてしまうと、次の一歩を踏み出すとそのまま落ちてしまいそうな感覚に襲われる。
停電で、何も見えないところを手探りで歩くよりも怖い。
目を開いた状態で、自分の体はしっかり見えているからこそ、視覚が機能しているが故の恐怖感。
歩き出せなかった。
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