漆黒の蝶

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落ちてしまいそうな感覚。 そんな感覚が生まれると、座ること自体も怖くなる。 さっきまで横になっていたんだから、座っても平気だよ。 そんな風に言いながらも、しばらく立ったまま、ただ茫然としている。 そして、意を決してその場に座ってみる。 座るまでに、なかなかの時間を費やしていた。 その落ちるかもしれない恐怖感。 そして、立っていることでの疲労感。 死んでも、この感覚は残るのか。 やっとで座って、なんとなく足を伸ばす。 なんともないことを、なんとなく確認して。 両手を、ゆっくり固い地面に下した。 もし、ここが天国だったとしたら。 今までに死んだ人はどこにいるんだろう? この真っ白な空間で、まわりを見渡しても何も見えない。 自分の体は見えているのだから、目が見えないわけではなく。 やはり、何もないただの真っ白な空間にいる。 たった一人で。 遠くを見ても、近くを見ても。 何も変わらない風景。 距離や、位置や、高さや。 とにかくすべてが真っ白な場所で、自分がどこを向いているか。 だんだんわからなくなってきて。 そして、恐怖感が増していく。
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