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「終わらん」
誰が一日で終わるとか言ったんだ。
私だけど。
うちの会社は納品前は残業が続くけど、まだ企画段階は定時で帰る部署が殆どで。
22時になっても残ってるのは、このフロアに私だけだ。
「私も帰るわよー」
社長室から降りてきた母が私に手を振る。
っち。持ち帰ってから見せるか。
いや、もう明日で良いかな。
誰も居ないのを良いことに、椅子に体育座りでクルクルと回りながら移動する。
「そう言えば、早良くんは帰って来たけど、佐久くんは直帰? タイムカード押してないわよー」
「えー知らない」
「ふーん。珍しいわね。じゃ、お疲れ様」
ヒラヒラと手を振ると、母は車に乗ってさっさと帰って行った。
「よし。冷蔵庫を漁って何か食べてから帰ろう」
給湯室まで椅子に乗って、滑って行こうと、
思いっきり壁を蹴った時だった。
「あれ? 部長、こんな時間まで仕事してたんですか!?」
「ぎゃー!?」
佐久がバットタイミングで帰って来たが私は止まれない。
シャーッと佐久の前を椅子に乗ったまま通過して行った。
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