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「灰瀬部長、食べないんですか」
「…………」
壁に頭をぶつける私を横目に、佐久がカップラーメンにお湯を注ぐ。
『部長やっぱ可愛いですね』
そうサラリと言われて悶える28歳。
恥ずかしい。恥ずかしい。
夜のテンションは本当に恥ずかしい。
「あんた直帰すれば良かったのに」
「あは。ちょっと手間取ってまして。あ、麗也先輩、二つ三つ返事でしたがOKです」
「頑張ったわね。ありがとう」
佐久と早良が頑張ったのに仕上げられなかったのはちょっと悔しい。
「灰瀬部長もカップラーメンいかがですか?」
「恐ろしい! 無理っ」
22時以降に油っこい物を食べるなんて。
てか、
「一番下の引き出し、カップ麺ばっかじゃない」
新卒は荷物少ないから引き出しがスカスカで羨ましい。
――じゃなくて。
「独り暮らし? 自炊?」
佐久が入れてくれた珈琲を飲む間の他愛ないお喋りのつもりだったが、佐久は爽やかに笑って、そのあとちょっと拗ねたように視線を反らした。
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