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「俺は部長がお昼にフランスパンダイエットしてるの知ってるのに、部長は俺を何も知らないんだ」
「何よ、その乙女な発言は。あんたとはまだお昼一緒に食べた事ないじゃん」
三分をじっと待っていた佐久が、スマホに視線をずらし、割り箸を割った。
「いつも自分で作ったお弁当です。俺、大学からずっと独り暮らしだから」
「へぇ」
抜けてるように見えて意外と何でもできるのかしら。
諒みたいなモデルと付き合った時間が長いからか、イケメンは本当に色眼鏡で見てしまう。
でも糊の効いたシャツや、保存食で買ったカップ麺が減ってない辺り、本当にできるんだろうな。
「俺さ、10人兄弟の長男ですから。幼少期とか気づいたら弟背負ってサッカーとか遊んでましたよ」
「へー。私一人っ子だから羨ましいわ」
一人だし両親は働いてて殆ど家に居ないし、毎日のように会いにくるお爺ちゃんは甘やかすし。
最後の一口を飲み終わりながら、佐久はまだ食べ終わらないのかと見上げる。
目が合った佐久は、嬉しそうに微笑んでいた。
「良かった。俺はもっと部長が知りたいし、部長に俺を知って欲しいです」
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