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深谷槙子が死んだ。
それも失恋して飛び込み自殺をしたのだと、そう聞いたのは、僕が故郷に転勤になってすぐだった。
「歓迎会」と称して集まってくれたのは高校時代の友人たちで、自然とクラスメートだった彼女の話になっていた。
よくある話で、男に捨てられ
「彼が他の女と結婚するのを見るくらいなら死んだ方がましだわ」と彼女は泣いていた。などと、まるで見てきたように女の子たちは話していたし、彼女が死んだあとで、男に忘れな草の花束が届き、カードには「私のことを忘れないで」と書いてあったのだと、これまた見てきたように教えてくれたのは、男どもだった。
どちらも、本当のことかどうかなんて、もう誰も知らない。
僕は、物静かだった彼女の、いったいどこにそんな激しい感情があったのかと、ただただ意外に思っていた。
卒業して9年。その年月が彼女をそう変えたのか。
それともやはり「恋」が彼女を虜にして離さなかったのか・・・・・。
転勤してくる前、僕には恋人がいた。2年近く付き合っていて、お互い同じ気持ちだと思っていたのに、プロポーズした僕に彼女は
「ごめん・・・ついていけない」と言った。
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