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僕はあの日のことを忘れない。
自分以外の人が皆幸せに見え、
この世で一番不幸なのは間違いなく自分だと思った。
酒のせいで薄れていく意識の中でこのまま死んでしまいたい、と願ったりした。
それからしばらくは死ぬことばかり考えた。とうとう実行できなかったけれど。
想像の中で僕は、何度も何度も死んだ。
もう、生きていたくない・・・深谷槙子もきっとそう思ったのだ。
あの時の僕と同じように。
人は愚かだと笑うだろう。けれどこの気持ちは、経験してみなくては絶対わかりっこないのだ。
僕は、大して話したこともなかった彼女が、急に身近になったのを感じていた。
翌日、僕は早速彼女が身を投げたという街の中心部にある橋へ出かけた。
恐る恐る覗いてみたが、川は穏やかに流れていて、彼女を呑み込んだという日の荒々しさなんて、忘れてしまったかのようだった。
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