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役目を解かれた掃除人の先に待っているのは死のみ。
国の暗部を知りすぎた掃除人に安息の場など与えられない。
政府に繋がれた血濡れた鎖がほどかれるのは、口がきけない屍となった時。
それを承知の上で、義父は国に背いた。
失踪してから三年は、上手く誤魔化すことができた。
だがそんな、危険と隣り合わせながらも穏やかな生活は、長くは続かなかった。
病に倒れた義母を抱えて病院に飛び込んだ義父を待ち構えていたのは、かつての自分の同僚達だった。
義母はその場で強制的に病院に収容され、義母の命をたてに取られた義父は裏の世界へ戻ることを余儀なくされた。
そしてそんな二人を監視するため、派遣されたのが綾だった。
「…………ごめんなさい」
綾の実の両親は綾が小学校五年生の時に唐突に死んだ。
ショックが大きかったせいか詳しいことは覚えていないのだが、父と母が搭乗した飛行機が事故にあったのだということだけは覚えている。
綾はその時熱を出して家で寝込んでいて、搭乗する予定だったその飛行機には乗っていなかった。
だから綾はその事実を、当時義理の兄妹であった現在の相方から聞いた。
その相方も、綾の看病をするために予定をキャンセルして家に残っていたのだ。
幼い子供といえども、役割を背負っていない人間は排除される。
今まで親の庇護を受けて、ただの『子供』という役割を背負っていればよかった綾は、一気に『片付けモノ』という烙印を押されることになった。
だから綾は掃除人になった。
自分が死にたくなかったから、人の命を刈り取る者になった。
自らの役割を背負うために、国家人口管理局『リコリス』直属の殺し屋になった。
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