1 霧の先

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 基本、魔物は単独で行動しているというのが一般的に周知されていることだ。こういった事実を学者へ教えると小躍りして調べに来そうだ。  感覚でしか、状況が読めない彼女は進路を馬に託していた。  その馬とて視界が見えていないため、本能で走る。しかし、動物の本能こそ人よりも優れているものだ。  馬は難しい悪路をもろともせずに走り抜ける。  そして、バキバキッ! といういやな音共に岩場から森へと馬車は突っ込んだ。  伸びる枝が幌を少し破り、車体を傷つけていく。  それと同時に、追いつきかけていた小鬼が車体へと取り付こうとしていた。  レーンはそれをタイミングを完璧に見図り、その体が馬車へ届く瞬間に剣の柄でたたき落とした。  ムギュっという、情けない音ともに、小鬼は地面へとたたき付けられそのまま見えなくなっていった。 「これで、当分は平気か……」  レーンは剣を鞘へと収め汗を拭うと、ドカッと荷台に中に座り込んだ。  彼の中にいるものを呼び出すほどの事は無かった。  少し、出たいと催促が来たがそれに応じると、馬車から飛び出して合流しにくくなるのが目に見えている。  いい子なのだが、まだまだ制御出来るような子ではない。  驚異が過ぎていくと、少し大人しくなり、つまらないとばかりに意識をまたまどろみの中に埋没させていった。  彼自身も疲れているため、感覚的にレーンもまどろみに引き込まれてしまうような錯覚を起こしてしまうがそこは踏ん張った。  それよりも、ずっと運転を任せているので、早く変わってあげないといけない。  彼は重い体を引きずり、激しく揺れを繰り返す荷台の中でバランスをとりながら前へ進んでいった。 「エル、もういいですよ。変わってください」 「大丈夫なんですか?」 「ええ、この勢いです。もう追っては来れないでしょう」  いいながら、レーンは彼女の横に座った。  そして、手綱を受け取ると興奮しきっている馬をなだめようと少しだけ引く。  しかし、そう簡単にはいかない。 「まって、彼今すごくおびえているから、無理にやってもさらに焦らせるだけだわ」  少し待ってと、彼女はいい意識を集中させる。  すると、次第に馬車の速度が少しずつだが落ちてきた。
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