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都内住宅街。
至って普通の家々が建ち並ぶこの住宅街に、頭一個飛び出たくらいの立派な家があった。庭付き二階建て。門にはセキュリティがバッチリ。
ピーンポーン
そんな家の呼鈴を鳴らすのは、俺が働く依頼人の家だから。
「…………」
誰も出て来ねぇ。
この時間に行くって言ったよな?約束したよな?
心配になってきた俺はポケットからメモ紙を取り出した。
「14時、北沢さん……」
大丈夫だ。
時間もぴったり。住所も間違いない。表札も合ってる。
出掛けてんのか……?
「……あ、」
どうしたものかと考えあぐねていると、メモ紙のはしっこに注意書が書いてあった。
呼鈴鳴らしても出て来ない時は裏に回れ
裏……?
メモを書いてくれたウチのボスが書いた裏門はココというメチャクチャ簡単な地図を元に、広い敷地の周りをぐるり。
正門と比べたらかなり小さい裏口の門。けれどセキュリティはバッチリ。いかにも金がありますって感じ。これじゃあ余計に狙われんじゃねーの?なんて要らない心配。
「……でもどうやって入んだよ」
裏門へ来てみてもセキュリティ潜れなきゃ意味がない。暗証番号を入力して解除するタイプのロックを前に、溜め息を一つ。
「…………あ」
なんだ。
答えあったわ。
メモ紙のはしっこの。注意書のまたはしっこに小さな数字が8つ。
このメモ落とせねぇな……。
メモは早々にシュレッダーにかけようと考えながら暗証番号を押す。
ウィ、カチャ
ロックの外れる音。何故か恐る恐る門の取手を握り、開ける。
……入れた。
第一関門クリア。
問題は玄関だ。
はあ……これ、不法侵入にならないか?
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