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裏門から入り、玄関に向かう。
正門から玄関まで少し距離があった。ちょっとした庭みたいな物の真ん中に道が出来ていて、それを進むと玄関に辿り着く。
案の定、と言いますか。
玄関には呼び出しのチャイムが無いわけで。
普通は門の時点で許可を得ているわけだから、家主が門まで来るか、玄関を開けてくれるかしているのだ。
「はぁ~……」
玄関前で、大きくため息。
正直かなりめんどくさい。もう“不在でした”でこの話は流してしまおうか。
コンコン
ドアに付いていたノックでドアを叩くも、出てくる気配無し。
……もしかして鍵開いてたりしてなー。
ガチャ
「……マジかよ」
セキュリティの意味ねぇー!!
ダメ元でドアを開けてみると、見事に開いた。門のセキュリティにどんだけ信頼してんだよ。
しかし開いたからといって入ってもいいものなのか?それこそ犯罪のような……。
「っ……」
入るかどうかを考えていると、ポケットに入れていた携帯が震えた。着信相手は、ウチのボス。
「はい」
「ひよっちー?」
「はい。日吉です」
「んだよ、冷静だなー」
「…………なんですか?」
「あーそうやって構ってくれないんだー!」
あなたいくつですか。
「用件は?」
「構ってよ」
「構ってるじゃないですか。用件は?」
「……」
「黙るな」
「……はぁ~……しょうがない」
しょうがないってなんだ。仕事だろーが。
「北沢さん家着いたー?」
「着きましたよ」
「家ん中?」
「いえ。門は裏から入ったのですが……」
「玄関どうしよう、って?」
「そうですね」
「開いてんでしょ?入っていーよ」
「は?」
「入っちゃえ」
入っちゃえって……!
てかなんで開いてる事を知ってるんだよ。
「いや、それは」
「大丈夫。依頼人さんからちゃんと許可貰ってるから。不在であろうと何だろうと入っちゃって下さいって。だから裏の暗証番号、あったでしょー?」
……なんじゃそりゃ。
というかボスの話を聞くかぎり北沢さんが許可を出したというよりか、誰か別の人が北沢さんの代わりになって依頼して許可を出した……って感じ。
北沢さんは大学生だと承っている。英語を教えて欲しいと。家庭教師登録していた俺は帰国子女ともあって駆り出されたわけだが。
別に大学生が他の大学生を教える事は珍しくない。でも、大学生なら自分で依頼するよな?
ますます意味わかんねぇー……。
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