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「ごめんください」
入っていいという許可があるのなら入る。いつまでも玄関前でぐずぐずしていられないのだから。
ドアを開けて中に入る。やはり広い玄関。俺の部屋くらいあったりして?真っ直ぐ続く廊下の先にはドアがあっても、閉まっているから分からない。
「すみません、今日2時に約束していた家庭教師の日吉です」
広い玄関に俺の声が響く。
恐らく居るであろう家主に向かって声を掛けた。
「…………」
居ないのかっ?!
いやいや、約束しておいて!玄関開けっぱで!不在は無いだろ?!
「すみません上がります」
ここまで来たら中まで入らせてもらおうじゃねぇか。入っていいって許可貰ってんだから。北沢さんからじゃなさそうだけど!
廊下を進み、その間にもいくつかのドアがあったがスルーして、廊下の一番奥、突き当たりのドアを開けることにした。
「失礼します」
何処に通じているか分からない為、一応ノックをし、一声掛けてからドアを開ける。
……リビング?
超広っ。
入って左にはカウンターキッチン。中央がリビング、右には白い革のソファーがあるダイニング。
ここだけで俺の家分の広さだなー。切ない。
ドサドサドサッ!!……ゴン
「ッッ?!」
なななっ、え?
何の音だ?なんか凄い音がしたが…………ソファーから?
ここから見ると背凭れ側になっているソファーの方へ、そっと歩み寄ってみる。
「…………」
誰だ、これ。
「……ミノムシ」
ソファーの向こう側へ回ってみれば、床に転がっているミノムシ発見。いや、人間か。一応。
茶色い毛布にぐるぐるにくるまっているその人は、顔だけ出した状態でスヤスヤ寝息を立てながら安らかに眠っている。床暖房であるフローリングに頬を当てて眠るその表情は本当に幸せそう。
もしかして……ソファーから落っこちたか?しかもゴンッて…………頭打っただろう思いっきり。
それでもぐっすりと眠っているコイツは恐らく家主の北沢……だろう。
「……大学生なのか?」
北沢さんであろうその人の寝顔はあどけなく、なんというか……可愛らしい?
俺はその人の顔の前にしゃがみこんで、寝顔をずっと眺めてみた。
すげえよ起きねえよ。
頬をつついてみても、起きない。
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