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「北沢さん?」
……無理か。
そりゃ頭打っても起きないんだから名前呼んだって起きねえよな。
「北沢さーん。家庭教師の日吉ですー。起きてくださーい」
ゆさゆさ
「起きねえよ……」
ミノムシの身体を揺すって、さっきよりも大きめな声で呼んでいるのに、相変わらずの安らかな眠り。
最強だな。
「起きろー」
「……ん、うぅ……」
むにぃーっと。
頬をつねるという強行手段に出てみた。大事な客であろうと、寝ているんじゃ話しにならない。
「起きてください、北沢さん。勉強しますよ」
「ん…………りょぅ、ちゃん……」
誰だそれ?
「違いますがとにかく起きろ」
すりっ
幸せそうににんまり笑った北沢さんは先ほどつねった俺の手に頬擦りしてきた。
……甘えてんのか?これ。
いやいや起きてもらいますから。
「時間切れでーす。はい起きますよー」
「……んんっ……」
よっこらせ、と。
ミノムシの身体を無理矢理起こしてみた。軽いなー。
「…………」
「…………」
向かい合って床暖房の床に座る。肩に手を置いて支えないと倒れてしまう北沢さんの覚醒を、じっと見つめて待つ。
ごしごし
ぱち、ぱち
目を擦って、瞬きをして。
また擦って、瞬きをして。
何度かそれを繰り返すうちに、段々と目が覚めてきたようで。
「……おはよぅ」
「おはようございます」
へらり
笑った北沢さんとは初対面。
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