紺碧2

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おばちゃんたちの話が適当に区切れたところで、更衣室に入る。あからさまに反らされた視線に気付かないフリして、バサバサと軍服を脱ぐ。 きっともう、ここにはいられないんだろうな。         * 「あんねぇ、シュウ」 ベッドの上で、頭をタオルで荒っぽく拭う。シュウはわざとのように、あたしを見ない。 「───多分ね、あたしたちのこと、全部バレてる」 「……そうだよなぁ」 「とうっ!」 シュウの背中に抱きついた。小学生のシュウが嫌がってから、こんな接触はやってなかったから、久し振り。いつの間にかゴツゴツして、大きな背中になっていた。 「ちょっ、ツグミ!!」 「どこに行こうかなぁ。もう大阪にはいられないもんねぇ」 「……あぁ」 「取りあえずね、綺麗な海があるところに行きたいなぁ。東京湾は、汚かったから」 「そうだな……」 「いつ出発しようか」 「───今夜」 くすっ、と笑った。あまりにも、シュウらしい決断だった。思い立ったが吉日、ってやつ。 あたしとシュウがいれば無敵だもんねぇ、とあたしが言ったら、 当たり前だろ、とシュウは言った。         * 隊舎から抜け出したのは、夜の八時半くらいだった。
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