紺碧2

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「───なんで、いるんですか」 門の前には、あたしを今日の昼間に大袈裟なくらいに誉めたおじさんが立っていた。 ・・・・・・ おじさんたちが立っていた。 「───ワイら知ってたで。あんたらが東京モンやって」 「え、」 「大阪弁も話せんやつが幹部さまのお子さんにおる訳ないやろ」 確かに、と思わず頷いた。確かに、でも、なんで。 裏切り者のあたしをなんで、 あんなに温かく受け入れてくれたの。 「───ツグ坊もシュウ坊もええ子や」 ツグ坊、シュウ坊は入軍してすぐに付けられたら名前。 「年も取りゃあ目を見れば解るんや。相手がどんなやつか───ツグ坊もシュウ坊もええ子やって、みんな解っとる」 「あの、」 「こんなにええ子らが裏切るなんて───東京の大人は随分と非道いことをやっとったんやろってみんなで話しててなぁ」 後ろから、ひょいっとおばちゃんたちが顔を覗かせた。今日、噂話してたあのおばちゃんたち。 「悪かったなぁ、アタシらが噂やって話してもうて」 「別に、その、」 「───出て行くんやろ」 あたしの言葉をぶったぎったおじさんは、とても哀しそうな瞳をしていた。 「ええんや。若いうちにほうぼう行ってな、たくさんのことを知ってこい。───そんでいつか、大阪に戻ってきぃや」 「え、」 「大丈夫やて。いつでもワイらは受け入れてやるさかい」 行ってこい、とおじさんとおばちゃんは笑った。
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