不思議売ります2

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わたしはいつものように図書館に入る前にポストの中を確認する。入ってる訳ない、だってこの図書館は山の奥にあるんだから。 「───え?」 ポストの中にあったのは、薄い紫色の横長の封筒だった。金色のシールが、夕日を照らしてぴかりと光った。 とりあえず、ヴィオレに渡そう。 そっと封筒を取り上げて、図書館の中に入った。 ───ちりりん─── 「こんにちは、ヴィオレ」 「いらっしゃい、琉生」 にこり、とヴィオレはいつも通りに笑う。テーブルには二組のカップとソーサー。 まるでわたしが来るのが、解っていたよう。 まぁ今更、そんなことでは驚かないけど。 「あ、ヴィオレ。手紙が届いてました」 どうぞ、と封筒を差し出して、わたしは書庫に向かう。学校帰りに来たから、あまり時間がないのだ。それに、話したいこともあったし。 「手紙?珍しい」 カサカサと紙の立てるあの特有の音を背に、本でぱんぱんに膨らんだ鞄を片手に、地下へと向かった。
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