家族愛2

2/4
前へ
/26ページ
次へ
二人とも、がらんどうの目をしていたけれど。 「おはよう、お母さん、麗那!」 朝、あたしがそう言うと、二人ともどこか遠くを見ながらおはよう、という。 お母さんは、あたしと妹を学校に送ってくれる。ピンク色の、可愛い車。 お母さんは、あたしと妹に同じ服を買ってくれるようになった。 お母さんは、あたしにもたくさんの参考書を買ってくれるようになった。 幸福だ。幸せだ。 なのに───なんで。 あたしは今、紅蓮の炎に包まれていた。お母さんがつけた炎。 待ってよお母さん、なんで死のうなんて言うの。 待ってよお母さん、あたしちゃんと東大に入ったのに。 「お姉ちゃん、お姉ちゃん!早く逃げよう!まだ、まだ間に合うから!!」 「アハハハハハハハハハ───!燃えちゃえ燃えちゃえ全部燃えてしまえ───!!」 遠く、今度はあたしが遠くを見た。お母さんも麗那も、一瞬、見えなくなった。 「麗那、早く逃げて。死にたくないんでしょう?」 「お姉ちゃん───お姉ちゃんは!?」 「だってね、麗那」 あたしはにっこり笑った。 「あたしはお母さんと、一緒にいたいから」 麗那はぼろぼろと涙を零した。炎に刺されて、という訳ではなかったようだった。そして───そして。
/26ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加