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二人とも、がらんどうの目をしていたけれど。
「おはよう、お母さん、麗那!」
朝、あたしがそう言うと、二人ともどこか遠くを見ながらおはよう、という。
お母さんは、あたしと妹を学校に送ってくれる。ピンク色の、可愛い車。
お母さんは、あたしと妹に同じ服を買ってくれるようになった。
お母さんは、あたしにもたくさんの参考書を買ってくれるようになった。
幸福だ。幸せだ。
なのに───なんで。
あたしは今、紅蓮の炎に包まれていた。お母さんがつけた炎。
待ってよお母さん、なんで死のうなんて言うの。
待ってよお母さん、あたしちゃんと東大に入ったのに。
「お姉ちゃん、お姉ちゃん!早く逃げよう!まだ、まだ間に合うから!!」
「アハハハハハハハハハ───!燃えちゃえ燃えちゃえ全部燃えてしまえ───!!」
遠く、今度はあたしが遠くを見た。お母さんも麗那も、一瞬、見えなくなった。
「麗那、早く逃げて。死にたくないんでしょう?」
「お姉ちゃん───お姉ちゃんは!?」
「だってね、麗那」
あたしはにっこり笑った。
「あたしはお母さんと、一緒にいたいから」
麗那はぼろぼろと涙を零した。炎に刺されて、という訳ではなかったようだった。そして───そして。
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