12、隣の花は赤――つづき

9/29
前へ
/40ページ
次へ
 穏やかな通りを並んで歩きながら、ナツメと凪人はそれぞれ考えていた。  この哲学の道と、法然院が京都での思い出の場所。ここに謙介が隠されているとするなら、どこに。  まさか、寺のなかということはないだろう。人が見回るような場所に隠すことができるわけがない。  道沿いに、怪しい建物も見当たらない。 「京都じゃないのかな……」  ナツメが小さく呟いたとき、前方から中年男性がひとり走ってくるのが見えた。 「ああっ、ちょっと、そこの人!」 「そこの人……って、俺?」  男性に指をさされ、凪人は首を傾げた。 「そう、あの、携帯もってませんか? 携帯! 警察!」 「持ってますけど、警察って……」 「川に人が落ちてるんですよ、しかも全然動かなくって」
/40ページ

最初のコメントを投稿しよう!

40人が本棚に入れています
本棚に追加