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辺りは闇に包まれていた。都市部離れた辺境は月を指揮者に星々が合唱を振舞うために作られた空であった。
五十戸ほどの小さな村は、家々に月光のぬくんだ光の中に、茫洋(ぼうよう)とかすんでる。
村は死んでいた。
石積みの家屋を木で縁取った木製のドアは開け放たれ、夜風が力なくドアを叩く。
中央道を行進する四騎の騎馬があった。
『いったいどういうことだ。道に人っ子一人見当たらねえぞ』
先頭を行く男が洩らした。190cm程の身体に髭を生やしたその顔は正しく悪人、二本の長剣が背負われたそれは正に戦闘士である。
『ああ、確かに妙だな。家屋に人がいるのは間違いねえが。就寝の時間にはいささか早すぎる。』
月光が村の中央道を影一つなく照らしていた。左に並ぶ男が辺りを睥睨した後、同意した。男は山であった。220cmあるその巨体は身体が鎧と化していた。入れ墨だらけの頭に残されたのは前髪だけである。右手にはこの者しか扱えないであろう長槍が携えられていた。
四つの双眸が同意の眼差しを向けあった時、一つの影が無言で間を割ってきた。
175cm少しの身体は他の者が薄着の心地よい気温の中、寒さを耐え忍ぶ様に限界まで厚着されていた。かすかに見える隙間からは優しい顔が覗かせていた。
『珍しいな、マイルお前が起きているなんて、具合は大丈夫なのか?』
悪人面が気遣いを見せ、男は答えた。
『うん、なんとかね、それよりどうかしたの?』
声の性質からローブの主からは青年の様に見える。他の三人とは似ても似つかわしくないあどけない声だった。三騎の影を嘲笑が入ってきた。
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