─誤算─ Act38.

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返事もできないオレに構わず、葛谷はまくし立てる。 机上の雑貨を慣れた手つきで整理して、葛谷は席を立った。 「はー、帰ろ帰ろ。 あー、三次元の嫁ほしーなー」 葛谷はブツブツ言いながら、オレの返事も待たずにオフィスを出て行く。 葛谷が後ろ手に閉めたドアを、オレはしばらく呆然と眺めていた。 なんだ、それ…? オレはそれほどに他人に無関心だったのか…? 真紀だけじゃない、付き合いの長い葛谷にまでそう言われるなんて。 いや…葛谷だけじゃない。 隆弘にだって、そう言われていた。 社員のことも、真紀のことも、美緒のことも…? オレは誰のことをも、まともに見つめてなんかいなかったのか…? 一人取り残されたオフィスを見回し、オレはゆっくりと瞬いた。 慣れ親しんだこの場所が、奇妙なほどによそよそしく感じられていた。
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