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「美緒…」
小さく声がこぼれた。
美緒だ。
オレは足早に近づいた。
美緒はいつもの道の中ほどで足を止めてしまう。
後方の道路を車が通り抜けていった。
ほんの一時、ライトに照らされた頬は濡れていた。
かける言葉を見つけられないまま、オレは美緒を抱き寄せる。
「泣いているのか…」
腕の中で美緒がうなずいたのが分かった。
泣き顔を見るのも、泣かせるのも初めてだった。
細い体を震わせ、美緒はしゃくり上げている。
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