第1章

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「会社には、もう慣れた?」 「はい・・・」 「新入社員は、残業も多いから大変よね」 「はい・・・」 目の前に、お酒が運ばれてきて 彼女が静かにシャンパンを 口に運ぶ。 それに合わせて、自分も頂けば 甘いオレンジの香りが 口の中で広がった。 彼女をチラリと盗み見る。 特に変わった様子はない。 何で、私は、誘われたのかな。 聞いてもいいのかな。 それとも、待ってた方がいいのかな。 分からない。 だって、聞くところによると 世話好きの社員と違って 彼女には、私だけではなく 他の新入社員も、あまり誘われないと聞いた。 うーん。となると、 もし有るとしたら、心当たりは、あの会議室でのことしかない。 だが、それにしたって、何か話すことはあるだろうか。 時々、隣を盗み見るのを繰り返すと 彼女は美味しそうに、お酒を飲んでいた。 彼女の空になった、お酒と共に今度は、 夕食もまだだったので料理を注文される。 その料理に手をつけながら、彼女からされる話は 社食は何が美味しくて、オススメだとか。 夜更かしした次の日の肌のムクミをとる方法だとか。 会社に新しく導入したソフトの使い方についてだとか。 割かし普通の内容だった。 私は、完全に聞き役に回っていた。
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