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「会社には、もう慣れた?」
「はい・・・」
「新入社員は、残業も多いから大変よね」
「はい・・・」
目の前に、お酒が運ばれてきて
彼女が静かにシャンパンを
口に運ぶ。
それに合わせて、自分も頂けば
甘いオレンジの香りが
口の中で広がった。
彼女をチラリと盗み見る。
特に変わった様子はない。
何で、私は、誘われたのかな。
聞いてもいいのかな。
それとも、待ってた方がいいのかな。
分からない。
だって、聞くところによると
世話好きの社員と違って
彼女には、私だけではなく
他の新入社員も、あまり誘われないと聞いた。
うーん。となると、
もし有るとしたら、心当たりは、あの会議室でのことしかない。
だが、それにしたって、何か話すことはあるだろうか。
時々、隣を盗み見るのを繰り返すと
彼女は美味しそうに、お酒を飲んでいた。
彼女の空になった、お酒と共に今度は、
夕食もまだだったので料理を注文される。
その料理に手をつけながら、彼女からされる話は
社食は何が美味しくて、オススメだとか。
夜更かしした次の日の肌のムクミをとる方法だとか。
会社に新しく導入したソフトの使い方についてだとか。
割かし普通の内容だった。
私は、完全に聞き役に回っていた。
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