第1章

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「今日ね、田中君ったらね、海外運輸の企画で、あっ、田中君って言うのは、一昨年、はいってきた子なんだけどね」 「・・・」 料理とお酒がすすんでいく。 上機嫌に笑う彼女は、暗がりの中でも、綺麗だった。 肩の下まで伸びた真っ黒な髪が彼女が笑う度に艶やかに揺れる。 いや、光が少ないからこそ、更に彼女の妖艶で大人な雰囲気を際立たせていた。 バーが似合う人だなぁ。とどこか感心しながら その顔を見つめる。 「向こうとの時差間違えて、バイヤーと連絡とれなくて焦ってたの。チーム長に経過の報告するよう言われてたからね。それ見てたら、昔、結崎が失敗してたこと思い出しちゃって、ふふふ。あっ、結崎は、知ってる?シニアコンサルタントの・・・相葉とは、仕事をしたことがないかしら?」 「・・・知っています」 さらっと出てきた名前に、目を泳がせながら答える。 「懐かしいって、思うほど自分も年取っちゃったんだなーって思ってさ」 「高井さんのような年の取り方なら、ほとんどの女性の夢だと思います」 素直な笑い方をする彼女は、少し幼くも見えた。 更に、こちらを見て瞬きをした後 意地悪そうに笑うので、尚更そう見えた。 「おだてたって、何も出ないわよ?」 ほら、そういう顔。 意外だなって思う。 今まで、職場での姿勢を正しているような姿しか見たことがなかったので、新しい一面を知って面白くなると共に、興味が沸いてくる。 「本当のことです。さらに、高井さんを初めて見たとき、綺麗な人だなって、脳裏に焼き付けるくらい凝視しました。目を奪われるってこういうことを言うんだなと思いました。いくら、見ても飽きないんです」 「私ね、そういう、相葉の率直なところが好き」 「そうですか、ありがとうございます」 好きと言われて嬉しかった。だけど、平静を保って答えられたのは、彼女の雰囲気が職場で感じるより柔らかいと感じたからだ。 バリバリに、仕事が出来るイメージしかなかった彼女と、こんな風に話していること事態、不思議だ。 気づけば緊張が和らいできていた。 「私、相葉と同い年だったら、いい友達になれた気がする」
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