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何を感じて、彼女がそう思ったのか、私には検討もつかない。
「そうですか」
「でも、そうじゃないから駄目ね。相葉は、この線を越えてはこないもの」
「高井さんこそ、率直ですね」
「ふふふっ」
トマトとクラッカーにパプリカを使ったソースをかけ
口に運ぶ。
この店は、料理も美味しい。
もし、同い年なら友達だった、か・・・。それは、何だか残念だったな。足早に年をとることはできないし、また、とれたとしても、とる気はないが。
だけど、その言葉に少し勇気をもらって、突っ込んでみる。
「私、さっき、結崎さんを存じていますと、お伝えしましたよね」
「ええ」
「その事で、お話があったのではないのですか?」
「そのこと・・・?」
彼女が、本当に分からないというような様子を見せたので、話を続けた。
「会議室の前で、お聞きしたんです」
言ってしまえば、案外すんなり言葉が出てきた。
「会議室・・・・。あ、ああ。あれを聞いてたの?」
「すみません。・・・その事で、誘われたのではないのですか?」
あの会議室で聞いたことを誰にも言うつもりはない。
勿論、あれから誰にも話していない。
でも、もしも、彼女がそれを危惧していたら・・・。
と考えてみたんだけど、この推理は不出来だな。
全然、しっくりこない。
もし、彼女が私に口止めしたかったなら、もっと早く誘っただろうし。
もっとも、彼女が、そういうことをとやかく言う性格には思えなかった。
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