第1章

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「私には、分かりません」 結崎さんは、それは素敵な人だけれど・・・・ 私も、好きになっちゃったくらい素敵な人だけど・・・。 高井さんも素敵な人だ。 彼じゃなくても、いいんじゃないかと思う。 浮気をする人は、浮気を繰り返すって言うし、それが本当でも違っても、リスク回避というか。 一度、浮気した人よりも、しない人の方が、当たり前だけど、いいんじゃないだろうか。 だって、一度は、傷つけてきたんだよ? 喧嘩とか、意見の食い違いとか、無意識とかじゃなく、一度は裏切ってきたのだ。 「浮気を許すだけで、彼がそばにいてくれるなら、私は、何度でも許すと思う。そうすれば、一緒にいられるでしょう?」 高井さんの言葉が頭の中でまわる。 好きな人と離れる不安からは、解消される。 それに、高井さんは、自信を持っている。 彼は、自分のところに戻ってくると。 許すことが出来ず別れるのと。許して、一緒にいる。 どっちがいいか。なんて本人次第だ。 それに 私の彼は、もう二度と浮気しないわ! と言うような女性だったら、その女性が、また傷つく可能性を考えて、反対したり、別れた方がいい。と自分なりの意見を伝えることもあるけれど、高井さんは、彼がまた浮気することも念頭に置いている。 浮気するところも含めて、好きなままでいるんだ。 それって、どんな覚悟だろう。 いや、どれだけ、相手のことが好きなんだろう。 やっぱり、理解出来ない。 「相葉は、好きな人とかいないの?」 ふと、高井さんと言い争いをしていた女性のことを思い出した。 私にだって恋人がいた時期があるし、片思いで心を寄せた人もいる。 なのに、今、自分に好きな人がいたのかさえ、答えに迷ってしまった。 「いたような気がします」 「なぁに、それ?」 クスクス笑う彼女の横で、もう一度考える。 よくもう一度考えてみるけれど、気分がのらないのか。アルコールがまわってきたのか。たぶん、後者。 頭がうまく働かない。
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