第2章

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   一年前、と言う男が殺人罪の容疑で、自宅で逮捕された。  一人暮らしの女性、まりをストーカーし誘拐。その後、目をくりぬき殺害。  事件が公になった時は猟奇殺人者としてメディアを騒がせた。  塩崎が刑務所に入るとみるみるうちに衰弱し自殺してしまったと報道された。 「お前、聞いてちゃんと記事に出来んの? 俺、この話聞いてちょっと震え上がったぜ」 「そこを読者が知りたがっているんですから教えてください! うちが独占で出すんで」  週刊ウォッチ、所謂ゴシップ誌。三春はその雑誌の記者を勤めている。  だから読者が面白がるネタなら何をしてでも欲しい。  それも刑事の鶴間が震え上がるようなネタならなお更だ。面白いものになるに違いない。 「塩崎が務所に入ってすぐに様子がおかしくなったと聞いている。ぶつぶつと独り言を話し、ある時は何かを見つめ、ものすごく脅えていたそうだ。俺から言わせれば塩崎は元々精神異常者だと思うがな」 「どう言う事ですか?」  鶴間はネギマを口に放り込み、ビールで流し込むように胃の中に入れた。 「塩崎が殺害した女の目をなんでくりぬいたか分かるか?」  三春はメモを取る手を止め顎に手を添え悩んだ。 「いえ、分かりません。綺麗だったからとかでしょうか」 「ずっと自分だけ見ていて欲しかったそうだ。目を逸らさずに。塩崎を確保する際、ちゃぶ台の上に置かれたグラスの中に水と一緒に目玉が二つ浮んでいた。塩崎はそれをじっと見つめていた。だから務所に入る前からあいつの頭はいかれてた。俺からすれば、塩崎は最初から精神異常者だと思うけどな」
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