コワレタ華

9/14
前へ
/655ページ
次へ
繁華街を抜けて、しばらく道なりに歩けば住宅街に入るこの街。 あたしと満希の住んでいるマンションまでの距離は意外に短くて、マンションの近くには小さなコンビニがある。 「のろのろしてんな。早く入れよ?言っとくけど、誰かさんのせいで、めちゃくちゃ腹減ってんだから。」 不機嫌そうな声がする方へ目を向ければ、あたしよりもかなり先へ進んでいたらしい満希。 すでに、パンツのポケットから家の鍵を取り出しているのが見える。 「誰も頼んでないじゃん。先に食べてれば良かったでしょ?」 あたしを迎えに来たせいで、夕飯を食べ損ねたのだと言いたいらしい満希。 満希のいるマンションの入り口まで、小走りで向かうあたし。 そんな顔をされても、あたしにはそれに対しての罪悪感は皆無なはずなのに、矛盾しまくりのあたしの行動。 どうやら、あたしはそんな満希が嫌いではないらしい。 「優恵香ー?優しい優しいお兄様に、その態度はないんじゃないかー?」 満希は頭も良くて運動も出来る。ただ一つの欠点は料理のセンスが全くないとゆう事。 普通さ?どんなに下手でも卵くらいは焼けるもんじゃない? 満希はそのままフライパンに投入。そして、当然いつまでも火が通らないどころか殻が爆発。 あれを見た時にあたしは悟ったのだ。満希に料理をやらせてはいけないと。 「少しは、料理くらい覚えたらどうなの?」
/655ページ

最初のコメントを投稿しよう!

667人が本棚に入れています
本棚に追加