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満希がそう言うのには、ちゃんと理由がある。
ねえ。満希?あたしが羽耶ちゃんに叩かれてる時も、あたしの代わりに泣いてくれて、怒鳴ってくれたよね。
あたしが罵られている時も、必死に止めてくれた。
だからあたしは、今羽耶ちゃんの心配が出来るんだよ。
「満希。うっさいよ。早く食べちゃってよね。あたしが片付けんだから。」
正直言って、満希のこの目は未だに慣れない。真っ直ぐにあたしを見るその優しい目が苦手なのだ。
この優しい目は、母や父を思い出してしまうから。
「おっおいっ!優恵香…!まだ終わってないだろ…っ。」
机から立ち上がり、あたしは流しにカレー皿を置いた。
「ごめん。先に部屋に戻るね。食べ過ぎちゃったみたい。」
そんなあたしを、心配そうに見る満希の顔が目に入る。
満希のその目から、あたしは逃れる様にキッチンのすぐ隣の自室へ飛び込んだ。
…駄目じゃん。あたし…。満希は違うって解ってるのに。
自分から、羽耶ちゃんの話題を振ったのにね…ー。
どこかで、あたしは怖いのだ。満希のあの優しい目が変わってしまうのも。
大好きなあの手があたしを傷つけるモノに変わってしまうのも。
そんなわけないって解ってるのに…。
そして、無駄な心配をまたかけてしまった満希への罪悪感が、あたしの心を襲う。
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