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あたしってそんなに解りやすいのかなぁ。
解りにくいとは言われても、解りやすいなんて言われた事はなかったんだけど…ー。
「俺は、優恵香ちゃんの事なら解るよ。ほら、理事長へ急ごう。」
エスパーにでもなったらしい月君は、あたしの右手を掴んだ。その手は昔のままで冷たかった。
でも、その冷たさは心地良く感じるの。
月君の髪は教師らしく明る過ぎない茶色で、昔は耳に下がっていたピアスも今は面影すらなかった。
来た道を戻り、階段を上る不自然にも見えるあたし達の手。
不思議と振り払う気にはならなかったんだ。
「…月君…ー。」
あたしが発する事が出来た初めの言葉。
振り向いた彼は、嬉しそうに顔を綻ばせた。
「ほら、入って?」
そう言って、理事長と書いてある部屋の扉を彼は開ける。
ん?ノックとかしなくていいわけ?
不思議に思いながらも、開かれた扉の中へ入るあたし。
入ってすぐに目に入った机。
ふーん。理事長は松橋月って人かあ。
ん?…月…?
「理事長…?松橋…月…?!ってええー?!」
さっきから、あたしは驚かされてばかりな様な気がする。
だって、理事長って…ー。月君は、あたしの記憶が確かなら満希と同じ年齢…ー。
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