懐かしい再会

12/15
前へ
/655ページ
次へ
ずっと変だとは思ってたんだ。だって普通ならテストも受けなくてはいけないのに、あたしはそのテストすら受けていないのだ。 満希が用意した制服だってすぐに届いたし。 今考えれば、不自然な事だらけだったんだよね。 「どうも。羽山高等学校の理事長の松橋です。満希から聞いて、楽しみにしてたんだよ。」 そう言って、月君はあたしの大好きだった優しい笑みを浮かべたんだ。 本当はずっと気になってた。羽耶ちゃんと別れた後の月君が…ー。 満希にさえ聞くのが怖かったのだ。何よりも羽耶ちゃんに知られるのが怖かった。 あたしが月君に好意を持っていた事を…ー。 羽耶ちゃんに知られたら、また叩かれるかもしれない。怒られるかもしれない。そんな恐怖心から聞くに聞けずにいた。 「月君…。久しぶりっ!」 だけどね? 彼は羽耶ちゃんの関係者の中で唯一、笑いあう事が出来た人なんだ。 「…っ。優恵香ちゃんは変わらないなぁ。駄目じゃないか。そんな顔で笑っちゃ。」 そんなあたしから目を逸らす月君は相変わらずだった。 だから、自然とあたしもそれに答えようと思えたのかもしれない。 あの頃に戻ったかの様に…ー。 「ふふっ。7つも下の子相手に照れちゃ駄目じゃん?」 これがあたしだ。 自意識過剰と言われても構わない。あたしを解ってくれる人だけが理解してくれたら、それだけでいいのだから。
/655ページ

最初のコメントを投稿しよう!

668人が本棚に入れています
本棚に追加