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月君があたしの前に出したのは、紅茶だった。
大好きなミルクティー…ー。
覚えててくれてたんだね。あたしの顔が自然に緩んだ気がした。
「担任を呼んだから、顔だけ合わせればいいよ。教室には明日から行くといい。」
そう言って、月君ははにかむ様に笑う。
あたしが出されたばかりの紅茶を口につけた所で、ノックの音が響いた。
その音に答える様に月君が口を開く。
「入りなさい。」
その声はあたしと話していた時よりも数段低くて、月君が本当に理事長なんだと実感する。
入って来た男の人は、長身で細身の教師には見えないタイプだった。
その人の目はどこか冷たく見えて、威圧感すら感じる。
それがあたしの彼への第一印象だ。
「あっ。城煉です。明日からよろしくお願いしますっ。」
改まって挨拶するのは、苦手だった。
編入する事になんて慣れていないのが当たり前だ。
それに、あたしは人付き合いも得意ではない。
「…おい。月。なんだこの生物は。」
…ん?…せい…ぶつ…?
「ぶっ…!おまっ…。優恵香ちゃん相手にそれはないだろ。」
豪快に笑い出す月君とその人のやり取りを見るかぎり、どうやら知り合いらしい。
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