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それに今思えば、あたしに紅茶を出したのだってそうだ。
理事長が生徒を特別扱いしてるなんて噂が流れる可能性だってあったんだから。
「…。忘れてた。これ、教材一式と、言われてたやつ。」
そう言って、右手に持っていた大きめの袋を月君に手渡す桐ヶ谷先生。
ねえ。それが一番の用事だったよね?
忘れちゃ駄目だよ。桐ヶ谷先生。
「そんな目で見ないの。…ほら手出して?」
どうやら、あたしはなかなか冷たい視線を桐ヶ谷先生に向けていたらしい。
月君に言われるがままに手を出すあたし。
言われた通りにする自分に、まだ素直な部分があったんだなと思う。
掌に感じるひんやりとした感触に目を向ければ、銀色の何かがあった。
「…ブレスレット…?」
それは銀色がベースで中心部には小さめの白い石が埋まっている。
しばらく、そのブレスレットを見つめていれば月君の視線があたしに向いてるのを感じた。
「気に入った?」
そう言って首を傾げる月君に、あたしは無言で頷く。
だって、あたしの好みそのままのブレスレットだったから。
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