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外へ出てからもその不安は消えない。
もう一度だけ中へ戻ろうか。
...いや駄目だ。そんな事をすれば彼等の足を引っ張ってしまう。
「優恵香?綾って?」
あたしを心配そうに見つめる羽耶ちゃん。こんな事を想像出来ただろうか。
互いに互いを傷つけていたあたし達が今は互いを気づかっている。
「...大事な友達。初めて出来た女友達。」
あたしがそう言えば悲しそうに微笑む彼女。
あたしはどんな顔をしているのだろうか。
不安そうな顔をしている?
「優恵香さん....」
桐生君はきっと何か知ってるはずなのだ。
綾の名前を出してから彼の顔はどこか苦しそうに見えるのだから。
「桐生君。綾に何かあったの?」
あたしが聞けば彼はただ顔を曇らせるだけで何も話そうとはしない。
....あの子の身に何かあったんだ。そうに違いない。
じゃなきゃここにいるはずだ。
そんな不安を隠しながら、彼等の姿を待つあたし達。
どれ位そうしていただろうか。
中にいた彼等の姿が見えてくる。
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