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「優恵香。いつまで出歩いてんだ。遅いから心配しただろ?」
あたしの後ろから、不意に聞こえてくる低い声。どうも、帰るには遅過ぎたのかもしれない。
「満希…。相変わらず、過保護なんだからっ。」
城煉満希(ジョウレンミキ)。それが彼の名前で、多分彼だけが本当の意味でのあたしの味方だろう。
軽く息を切らしながら、迎えに来たところを見ると、かなり心配していたみたい。
「お前なーっ…っ。もう少し自覚しろよ。その容姿じゃ、出歩くなと言っただろ?」
そんな彼とあたしのやり取りを見ていたであろう周囲の反応は嫌でも耳に入ってきた。
「…チッ。男連れかよ。」
「あの人素敵っー!」
どこにいても、目立つ満希にあたし。
こんな声なんか、前にいた街でも聞き慣れてる。
「ちゃんと解ってる。でもさ。満希?外見は最大の武器でしょっ?」
あたしだって、何も初めからこんな考え方になったわけじゃない。
「ったく…。お前なあ…。その考え方は危ないって何度も言ってるだろ?」
そう言って、満希はあたしの頭に拳を乗せて困った様に笑うんだ。
これは彼のあたしだけに見せる彼の優しさなのだ。
「ふふっ。満希だって、似た様な考え方なくせに」
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