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「折角だから、もうちょっと奥の方まで行ってみる?」
アリシアが問いかけてくる。
「そうだな~……」
ガルバーグさんからの依頼は、言うなれば子供のお使い。
そりゃそうだ。6歳の俺でもできたことだ。
魔物の居ない範囲でも運が良ければ――というかよほどの悪運に見舞われない限り――手に入る香草を数枚採るだけの簡単なお仕事。
時給にすると数百Gにしかならない。さらに言えば全然時間もかからない。
昔の記憶を頼りに、香草の群生地を目指すとあっさりと必要な枚数分を採り終えることが出来た。
あまりにもあっけない。これじゃあ初依頼達成記念の打ち上げパーティを開くこともできない。二人でお茶を飲んだら吹き飛ぶ報酬。
なにより、刺激が少ない。それ以上に達成感がすこぶる少ない。
無難に終わるのはいいことなんだけど。
「あれでしょ? この辺って薬草とかも生えてるんでしょ?
ついでに採ってマリシアにでも売りつけましょうよ」
悩む。思案。
ボォンラビットなんかが今も居るのかわからない。今の俺ならあれくらいの相手とはやりあえる自信は無くは無い。が、はっきり言って魔物との遭遇は運次第。
運が良ければほどほどの相手。運が悪ければ恐ろしく強い相手に巡り合う。
地域や地方によって生息域はある程度は決まっているものの、相手は魔物。気まぐれで神出鬼没なこの世界の同居種族。
出会いがしらに厄介な種族に遭遇しないとも限らない。
野獣種(ビースト)レベルならまだしも昆虫種(インセクト)なんかは、アリシアと二人で大群に出くわすと対処のしようがないだろう。
俺はアリシアにやんわりと拒絶を伝える。
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