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普段は六本足で移動する蟻だが、戦闘になると腹を支点にして後ろ脚だけで立ち上がり、左右合わせて4本の足の先の爪で攻撃を繰り出してくる。
流れるような攻撃。
だが、受けきれないってわけじゃない。
蟻の攻撃を受け流し、躱し、隙を見て相手の胸部に剣を叩きつける。
キィンと乾いた音が響く。
「ダメだ! そいつは生半可な剣気じゃ斬れないんだ!」
剣士の一人が叫ぶ。
剣気か……、生半可どころか、あいにくとまだ剣気自体が身についていない。
幸いにして俺の手にしている剣、フライハイツはそんじょそこらのナマクラじゃない。 蟻の外殻ぐらいじゃ折れないし欠けないが、さすがに昆虫種の硬い殻を斬りつけるほどの切れ味は持っていない。こっちの攻撃も通用しない。
「まずい!」
また剣士から声が上がる。
「だから来ないでって言ってるでしょう!」
少女も叫ぶ。
複数の蟻が、標的を人の集まっている馬車に定めてゆっくりと警戒しながらも近づいていく。
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