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「大丈夫だから!」
アリシアが大声で叫びながら、魔術で迎撃しようと前に出た少女を押しとどめた。
蟻がアリシアの描いた結界陣の淵に触れる。
突如現れた火球が蟻を焼く。だが、それでも進行は止まらない。蟻はまた一歩、一歩と先へ足を進める。
さきほどよりも大きな火球が蟻にぶつかる。
そこで蟻はひるんだのか、向きを変える。
なるほど、セミオートでの火炎による迎撃システムか。攻防一体の結界魔術。
しかも三重ってことは、今蟻を退がらせた火球よりも強い攻撃がもう一段残っているってことだ。
アリシアってば、いつのまにこんな高度な魔術を……。
と感心している場合ではない。
仲間に据えられた痛いお灸で学んだのか、蟻達の標的は俺に変わった。
唯一結界の外に出ている俺へロックオン。
今相手にしている1匹。それに加えて新たに4匹が俺の元に向ってくる。
まとめて相手できれば十全だが……。
囲まれてしまうと厄介だ。
まずは1匹。
相対する蟻から距離をとり、一気に詠唱する。切り札の魔術。
俺が唯一使える上級魔術。
ポーラさん直伝の必殺技。
「ヘリムゾン……」
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