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「さあルート! お父さんの許しも出たことだしっ!!
何時まで寝てるのよ! さっさと行くわよ! 冒険者ギルド!!」
アリシアに朝っぱらから叩き起こされた。
強行日程の長旅で到着した昨日の今日だというのに……。
だけど……、アリシアの気持ちもわからないでもない。
ゴーダの死を悲しんで沈んでいる俺の心を切り替えるために。
あえて、誘いをかけてくれている……のだと思う。良い風に考えると。きっとそうに違いない。
そうだ。くよくよしてても仕方ない。
大いなる目的に向って、再出発の刻(とき)だ。
それが、ゴーダへの弔いにもなる。きっとゴーダはそうする俺を望んでくれている。
「いくわよ! さっさと登録して依頼を探しましょう!」
というわけで……、即出発というわけにはいかない。
準備が何もできていない。
着替えと朝ごはん。歯磨き。洗顔。その他もろもろ。
出発の準備。
持ち物は、学園から貰った推薦状と、命の次に大事な剣。
剣を身に付けながら昔を思い出す。
俺と剣とを繋ぐ剣帯。これはシンチャが6歳の誕生日にくれたものだ。
学園時代はあえて使わなかった。ずっと大切にそばに置いていたけれど。
いつか、立派な冒険者になって、自分の剣を手に入れた時に使おうと決めていた。
だけど、俺の剣はもう手に入った。
一生……、目的を達成するまで使い続けようと心に決めた、ゴーダが俺に託してくれた剣だ。
元々は英雄の剣だそうだけどそんなのは関係ない。
この剣と帯があれば……たとえ遠く離れていても、もう二度と会えなくなっても、俺はゴーダとシンチャと繋がっていられる。
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