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「まあ、こつこつと依頼をこなせばEにはすぐに上がれる。
問題はその後だ。ここらじゃあ、Dランクの依頼は滅多に出ねえ。
それだけの人材が常駐してるわけじゃあないからな。
わざわざ人の多い街のギルドから冒険者を引っ張ってくるってのが慣習化しちまってる。
だが、先の事はまた先で考えたらいい」
「はい」
ガルバンさんは足を引きずりながらカウンターの中を左右する。
あっちの書類こっちの書類と手際よく仕分けて、
「ほらよ、これが、ギルドカードだ。
マーソンフィールの中なら全国共通。
再発行が面倒だから無くすなよ?」
「もちろん」
念願の冒険者。
グヌーヴァのギルドにはそもそも人が少ないし、地元の有力者の娘――アリシア――と一緒だから、とりあえずルーキーをおちょくるために絡んでくるような馬鹿な冒険者は居ない。
なので、淡々と手続きが終わった。
アリシアが眺めている依頼掲示板へと向かう。
「碌(ろく)な物がないわねえ」
とアリシアは早速ため息を漏らしている。
「そりゃ、単価が高かったり、こなすと高めの評価が得られてランク上げに繋がるようなのは、朝一で出ちまってるよ」
とカウンター越しにガルバンさんが声を掛けてくれる。わかっていたけど世知辛い事実だ。
「なんか掘り出し物ないですか?」
とアリシアが尋ねる。アリシアもガルバンさんとは面識がある。
コネを活かそうという作戦。
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