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だが、ガルバンさんはつれない。
「そこにあるのが全部だよ。
もっともあったとしてもルーキーであるお前達には紹介できねえさ。
依頼人の手前もあるしな」
「そうですよねえ……」
とアリシアがまた大きなため息をつく。
面白味が無く、面倒な、安い報酬の依頼ばかりが残っている。
希望に燃える俺達にふさわしいものは無いという残念感。
だが、俺はひとつの依頼に注目する。
びっくりするぐらい報酬が安い。だれも引き受けないのも納得の冒険価格。(悪い意味で)
ダメ元で依頼しているんだろう。ついでにこなしてもらえば儲けもの程度の軽い気持ちで。
だが、俺の心は決まった。
「ガルバンさん、これを」
と俺は依頼表をカウンターに持っていく。
「えっ? あった? そこそこイけてそうな依頼?」
とアリシアに尋ねられるが俺はきっぱりと首を振る。
「安いし、単純な作業だけど……、依頼主には恩があるんだ。
だから、始めの依頼はこれにしようと思う」
ガルバンさんが依頼表に目を落とす。
「ああ、肉屋のガルバーグさんか。
そういや嘆いてたよ。
客からは香草置いてくれって声がたびたび上がるのに、香草採りなんて手間だけかかって売り上げには繋がらない。
単価が安すぎて依頼を出しても誰も引き受けてくれないってな」
俺はアリシアに確認した。どうせ了承してくれるだろうけど念のため。
「こういうのってお金の問題じゃないだろ?」
「しょうがないわねえ。別に赤字になるってことも無いでしょうし。
ここでうだうだしてても、新しい依頼は舞い込んでこなさそうだしね。
ルートの恩返しなら、やらない理由は無いわね」
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