1章

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太陽が燦々と照り付ける昼下がり。 茹だる様な暑さの中、神崎摩利は歩いていた。 (暑い・・・とにかく暑い) 額にじんわり浮かぶ汗を腕で拭いながら、摩利は辟易としていた。 彼にとって太陽からの直接的な熱は問題ないが、それによって生じた地表からの放射熱や湿度云々は避けようがない。 何よりも、歩き始めてから既に5時間が経過していた。 腰に提げている水筒の中身は温くなってしまって、もう飲む気もおきない。 旅から旅の根無し草を自称する摩利にとってこの程度の時間歩き続けるのは日常茶飯事であり、前に滞在していた町は比較的涼しいところだったので、今回も例に漏れず徒歩を選択した訳なのだが。 (これが話に聞く夏ってやつか。正直侮ってた) ある程度歩いたところで気候が急変したのだ。涼しく快適な気候から、じめじめと暑い気候に。まるで、ある境界で線引きしたかのようにはっきりと。 天候が急変した事は彼にとって驚く事ではない。 また、この地域に四季と呼ばれるものがあり、今がその中の夏というものに相当するであろう事は知っていた。 だが、夏というものがこんなにも不快なものだとは思わなかった。 比較的湿度、気温共に低い低域に滞在することが多かった彼にとって、これは辛いものであった。 (こんな事なら歩きに拘らず他の移動手段を使えばよかった) 目的地の影が見える気配もなくのびる砂利道に、まるで無限に続くような錯覚を覚えながら摩利は歩みを進めた。
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