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関所の門を通過した彼の目にまず飛び込んできたのは、圧倒的喧噪だった。真っ直ぐのびる大通りの両側に建物がずらっと建ち並び、人が絶え間なく行き交っていた。
道沿いに歩いて行くと、まず目に付いたのは建物の不揃いさ。建ち並ぶ建物は、色合い・建築様式どれを取っても全く統一性がない。皇都古来からの木造の建物があったかと思えば、その隣には獣人の国セリアンス特有の石造りの建物があり、中から熊の獣人男性が威勢よく声を張り上げて客引きをしていた。
(これがこの都市が商都と呼ばれる所以か・・)
異文化が心地よく混在する様に、摩利は思わず感嘆の溜息を零した。
これまでに多くの地を訪れた摩利だったが、ここまで他種族多文化が入り混じった都市は見たことがなかった。それもまさか"あの"人間の国で成されているとは驚きと共に、湧き上がる興味を隠しきれなかった。
(まぁ、まずは目的を達成しますかね)
大通りからは細い脇道が何本も繋がっていて、その細道の脇にもやはり建物が連なっていた。
きっとこの都市は探索すればするほど、色々な顔を見せてくれる事だろうと、摩利は確信していた。
未知なる物への飽くなき探求心。
それが摩利の行動原理だ。その衝動に身を任せて街を隅々まで探索してしまいたいが、一度探索し始めたら自分は止まらないだろう。
それを身に染みて理解している彼は、先に目的を達するべく行動を開始した。
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