1章

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こういった見知らぬ街を訪れる際に大切なことが二つある。 第一に行うのは地理の把握だ。これに関しては地図を買うなり何なりすれば達成できる。 そしてもう一つ--これが一番重要なことだが--はその土地特有の文化の把握。これは非常に難しく、資料を集めるだけではわからない事も多い。かといって知らないままでいるのも危険だ。自分にとっては何気ない行動だとしても、その文化にとってはそれが罪に問われる事だってあるのだ。知らなかったでは済まされない。 さて、この二つの条件だが、実は簡単に、しかも同時に達成する方法がある。 それは、現地住民の存在。その土地にある程度の期間住んでいれば文化や法は知っていて当然だし、土地勘もつくだろう。 問題は、どうやって現地住民か否かを判別するか、そしてどうやって協力をとりつけるかであるが。 とにかく、まず摩利は協力してくれそうな現地住民を探す事にした。 (とはいえ、そう簡単には見つかるわけもない、か) 関所の門から続く大通りを暫く歩いてはみたものの、条件に該当しそうな人物は中々見つからない。 現地住民は当然いる。極論を言ってしまえばこの軒並み並んでいる店舗群。その従業員達は現地住民だろうし、ある程度の居住歴があるであろう事も簡単に推測できる。露店ならともかく、こういった店舗は外部の人間が簡単に出せるものではない。かといって、店に入っていきなり道案内を頼むのは少々非常識が過ぎる。 (いっそ情報屋にでも行くか?) 情報屋は文字通り情報を売る店のことだ。求める情報をその重要度や機密度に応じた値段で売ってくれる。頼る相手が居ない場合、摩利はよくこの情報屋を利用していた。 (とはいえ今はなるべく金は使いたくないし・・・ん?) 摩利の前方、少し進んだところで人だかりが出来ているのが見えた。近付いてみると、人だかりはドーナツ状に出来ており、その中央で何か揉め事が起きているようだ。人だかりは、所謂野次馬だろう。 摩利が少し背伸びしながら見ると、誰かに怒鳴る様子の少女の顔が見えた。 (お、美少女はっけーん) 摩利は意気揚々と野次馬の中に身を潜らせると、人の間を縫うようにして進んでいった。強引ではあるが、他の人々は彼に気を留める様子もない。そして、ついに摩利は先頭に出た。
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