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「ご家族様はいらっしゃいますか?」
眼鏡にマスク姿。
医師の表情までは掴み取れない。
「連絡は入れましたが、彼の実家は三重なので、ここに来られるのは明日になるそうです」
そう言って七瀬は警察手帳を胸元に翳す。
「状況を、教えていただけませんか?」
それを受けた医師は皆の目を順番に見つめ、小さく頭を下げた。
「残念ですが……。先ほど、息を引き取られました」
彼女らの視界が、色彩を持たぬ絵画へと変わっていく。
目の前の医師が物質と化し、その他のものが風景へと移り変わる。
時が止まった、瞬間だった。
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