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手を伸ばし、遥か先を行く里美に届けと願い、叫ぶ。
間もなく車が行き交う大きな交差点へと差し掛かる。
横断歩道の先で点滅を繰り返すブルーの歩行者用ランプ。
赤になれ、赤になれと茜は決死の思いで祈り続けた。
そして10Mほど前方を走る里美が巨大な十字路に足を踏み入れるかどうかという処で、
彼女の願いが通じたのか、点滅していたランプが赤へと切り替わった。
しかし、それでも里美の脚は止まらなかった。
左右の信号が青に変わるまでの0コンマ数秒で、
更には停車している車がアクセルを踏み込むまでの僅かな時間で、
交差点を渡りきろうとしているのだ。
片側2斜線の大通り、今にも走り出さんとしている複数の車のライトが彼女の全身を照らし付ける。
そして半分を渡り終えた頃、1台の車がクラクションと共に彼女の前を走り抜けた。
その後も止む事無く通り過ぎるテールランプ。
人が通れる隙間など何処にも無い。
真夜中、大通りのど真ん中で、彼女の脚は止まった。
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