ACT-6

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裸足のまま背を向けて立ち尽くす。 頭は未だ、右に90℃傾いている。 「待ってて、私もすぐそこに行くから!!」 少し遅れて横断歩道の前まで来た茜達。 真っ赤に充血した目から溢れ出るものを、ぐっと掌で拭い取る。 「……1人じゃ……危ない……?」 その時、生暖かい空気を伝い、鼓膜を通り抜けた冷たい口調。 交差点の真ん中に立つ里美の頭がゆっくりと元の角度に戻り、茜の方へと振り返る。 「……あんたに……何が出来るって言うの……?」 溢れ出すやり場のない怒り。 茜に罪が無いことは分かっている。 誰のせいでもないことは重々理解している。 しかし、ザクザクと心を剣山で突き刺されるかのような痛みと苦しみが収まらない。 大口を開けて空気を吸い込む。 そして里美は行き交う車など気にも留めず、大声で叫んだ。 「――私はもうすぐ殺されるわっ!!」
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