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「あ、茜……」
里美に映る茜の目に、嘘偽りは無かった。
一点の曇りも無い決意に満ちた眼差し。
いつも彼女のことを護っていたのは、里美の方だった。
心配性で内気。
臆病で怖がり。
何でもすぐに泣いてしまうほど弱々しい茜が、今、涙を堪えて必死で訴えている。
信号が青に変わった。
雑音の消えた10Mほどの距離で重なり合う2人の視線。
「……生き……られるかな……?」
里美が自らの希望を消え落ちそうなほどの小声で呟いた。
「生きられるよ。……生きよう、ね?」
数秒の間を置き、里美の顔が小さく縦に揺れる。
「……そう、だね」
そして車道の真ん中に立った里美は、はにかんだような笑顔を作り両目尻から大量の涙を落とした。
「あれ、何でだろう?」
急に茜が、異変を訴える。
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