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意気揚々と寒村に戻ると、普段物静かな村が珍しく騒がしかった。
入口にも武器の代わりに三又の鍬をもった青年が緊張した様子で立っていた。
「どうもこんにちは。こんなに寒いのに鍬なんか持ってどうしたのですか?まさか今から畑を耕す訳ではないでしょう?」
冗談交じりに挨拶をしながらさりげなく尋ねると、青年は若干緊張が解けた様に笑いながら答えてくれた。
「エバンスさん、久しぶり。流石にこの時期から耕すのはきついなぁ……。これは耕す為じゃなくて、自衛のためだよ」
「自衛ですか……何か問題事でも?」
「魔族の子が出たのさ。こんな辺鄙な所、人すら中々来ないのに大層なことだよ」
笑ってはいるが、その顔は恐怖の感情が隠しきれていない。
魔族。
百年戦争からかなりの年月が経つが、人間は未だにこの言葉に恐怖を抱く。
昔と違い、今では人間と交流もする魔族だが、魔族全体の人口でいうとその数は半分にも満たないという。
さらにこの村は戦場からほど近い場所にあるため、恐らく人間と敵対している側なのだろう。
子どもとは言え魔族であることに変わりはなく、その気になれば人間を簡単に殺すことができる魔力を秘めている。
村からしたら早く対処したいのだろう。
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